「離島における全人的医療の可能性」講義@香川大学
2025年12月11日、地域医療 全人的医療教育プログラムの一環として、香川大学において、医学科4年生約100名を対象に、特別講義「離島における全人的医療の可能性」を実施しました。講師は、隠岐広域連合立隠岐病院の助永親彦先生(医師、myGEMS代表)です。臨床実習を控えた学生が、知識や手技の前に「自分はどんな医師でいたいか」を言葉にして考える時間になるよう企画しました。

開催概要
- 実施日:2025年12月11日
- 対象:医学科4年生 約100名
- 講師:隠岐広域連合立隠岐病院 助永親彦先生(医師、myGEMS代表)
- テーマ:離島における全人的医療の可能性
- ねらい:臨床実習前に、自分なりの「医師としての初期設定」をつくる
都市部と離島・地域のちがいを、「優劣」ではなく「性質」として見る
講義の前半では、都市部の病院と離島・地域医療のちがいを、どちらが良い悪いではなく「求められる働き方が変わる」という観点で整理しました。たとえば、患者さんとの距離の近さ、看護師や薬剤師など職種の違うメンバーと日々一緒に動くこと、患者さんを島外へ運ぶかどうかの判断、診療がそのまま暮らしに結びつくことなどです。
その流れの中で、病気だけを診るのではなく、生活や気持ちも一緒に考えて診る医療である全人的医療の具体像が示されました。離島という環境が「制約」になる場面もある一方で、医療と生活がつながって見えるからこそ学べることがある、という視点が共有されました。
いまの学生の価値観と、地域医療の相性を考える
続いて、デジタルに慣れ、上下関係より対等さを重んじやすい世代であるZ世代(True Gen)の特徴にも触れました。フラットな関係を好むこと、協力して進めることを大切にすること、続けられる形を意識すること、建前より本音を大事にすることなどが、地域医療の現場と重なる面がある、という整理です。
ここでは「地域医療が向いているかどうか」を決めつけるのではなく、学生一人ひとりが、自分の価値観と医療の現場の特徴を照らし合わせる材料として提示されました。
人の医師が担う役割を、4つの動きで捉える
講義の中心では、文章を作ったり質問に答えたりする計算の仕組みである人工知能(AI)が広がる時代に、医師が何を大切にして判断するのかが話題になりました。そこで、医師の働きを4つの動きにまとめた枠組みとして、CORDフレーム(Connect・Observe・Reason・Decide)が紹介されました。
- Connect:患者さんとつながり、信頼関係をつくる
- Observe:表情や生活背景も含めてよく見る
- Reason:得た情報をもとに筋道を立てて考える
- Decide:患者さんと対話しながら決める
「技術が進んでも、患者さんの前で起きていることを受け止め、納得できる形で一緒に決めていくことは、人の医師の大切な仕事である」というメッセージが、臨床実習直前の学生に向けて届けられました。
振り返りの時間:評価ではなく、自分の言葉で「初期設定」を書く
後半には、学生が自分の姿勢を言語化する時間を設けました。ここでの狙いは「正解を書かせる」ことではなく、臨床実習に入る前に、自分なりの初期設定をつくって持っておくことです。短い時間でも、自分の言葉にしてみることで、実習中に迷ったときの手がかりになります。
最後に、世代ごとの価値観の移り変わりにも触れながら、医療の未来は技術だけで決まるのではなく、医療者の姿勢によって形づくられていくことが強調され、講義を締めくくりました。
本講義が、臨床実習という現場に向かう前に、自分はどんな医師でいたいのかを確かめ、これからの学びを考える時間になっていれば幸いです。